2008年6月6日金曜日

6月6日(金)大阪維新プログラム発表

・ 遂に「大阪維新プログラム」と称して財政再建計画が「橋下知事の案」として正式に発発表された。昨日午後16時の外部発表であるから「上手いやり方」だ。午後13頃では夕刊記事になるから遅くし、「朝刊狙い」としたのだろう。案の上、今朝の各紙は「1面トップ記事」で社会面にも大きく補強解析記事が出ている。
・ さすがテレビ慣れしているからメディアの使い方が上手い。テレビに映る知事は「高揚感」で一杯で顔は紅潮、鼻を膨らましていた。「俺はやったぞ!」というところだろう。しかし悲喜こもごも、特に私学関係者は落ち込む内容だ。
・ 本校の教職員は120%感じているだろうが、全く「本校の改革足跡と同じ」だ。記者会見で知事は「とりあえず出血を止める」と表現した。これもまったく同じである。ただ根本的に異なっている点がある。知事は次のように言っている。「この改革の後に夢が来る内容ではない」と言い切っていることだ。これでは府庁の職員は辛いだろう。
・ 本校には「夢がある」。それは改革の後は「新校舎建設」だ。素晴らしい校舎を作る。現在、府には5兆円を超える借金がある。850万人を超える府民で赤ちゃんも含めて一人当たり60万円の借金を抱えている自治体だ。本校も銀行ローンはあるが額は比べようもなく少ない。だから夢が描けるのだ。「借金が多ければ夢は描けなかった」。
・ しかし昨日の知事の発表は当選したマニフェストと異なる。「収入の範囲内で予算を組む」といった公約は早々と破られた。財源不足の185億円を「府債を発行」して賄うという。退職金用の府債であるがこれも本校と良く似ている。本校も退職金引き当て資産がまったくなかった。すべて人件費に消えていったのだ。
・ 1100億円の削減目標で正味の削減は665億円、内訳は事業費抑制で320億円、人件費で345億円。残りは資産売却等で435億円の収入増を図るとしている。それで単純計算すれば185億円不足するから又「借金」」だ。
・ 各界の反応はまず、「知事を泣かせた市長会」は「及第点、60点」、財界は「一応評価」、総務省は「大歓迎」といったところだ。中央は「大阪方式が成功すれば他の地方に伝播」するから、心の中では「橋下、行け、行け」だろう。「大阪モデル」となるかもしれない。今全国の知事は固唾を飲んで大阪府を注視しているに違いない。
・ 新聞各紙、それぞれ斯界の一流人がコメントしているが「元鳥取県知事の片山善博氏」が上手いことを言っておられる。結局「役人風で取りやすいところから取っているだけだ。」「国との論争や仕組みの改革が全くない」とポイントを突いておられた。本校は仕組みを変えている。
・ しかし私は知事はなかなかしたたかで、前にも書いたが「知恵袋」がいると思う。今回の内容は「弱者へは優しく、市場で戦えないものへは切り込まない」」「市場で勝負できるものは勝負してください」と峻別していることだ。やはり彼は頭が切れる。
・ 大変良いと思うのは目だっていないが「新人事制度」の検討に入るとしている。この言葉もどこかで聞いたような言葉だ。「頑張ってくれている職員に報いる処遇制度」とすると言っている。恐らく3年以内に大幅に人事制度は変わってくるだろう。
・ 悲しいのは「府庁の役人」「センチュリー交響楽団」「ワッハ上方」「ドーンセンター」等他「ハコモノ」だ。努力をせず存在感が認められなかった団体は軒並み補助金を削減された。府立体育会館はかろうじて残ったが「あれは場所といい、大きな売却益が見込まれるので時期をずらしただけだろう。
・ しかしそれにしても「私学には冷たい」扱いだ。今でも全国最低レベルの補助を更に減らすという。私学中高連の会長はコメントで「私学差別」と憤慨し、副会長は「目の敵」と言われているが、まったくその通りだ。
・ 傍らでは「私学助成府議会議員連盟」の先生方が「傍観」せざるをえないくらい、きっぱりと「聖域」に切り込んできた。従来私学助成は「アンタッチャブルな領域」であり、ノック知事も太田知事も「口にさえ出せなかった」領域であったが、「しがらみのない知事」はどこ吹く風でやってきた。
・ 私学助成金は高校で10%、20年度で31億円、21年度の通年では48億円もの削減となる。授業料援助も年収規模を800万円から540万円に下げるか、厳しいご家庭では辛い話になろう。本校でも今事務長に指示して計算させているが大きな影響を受ける。
・ しかし知事は「私学が余程嫌い」に見える。彼の論理は「公立に行けば良い。私学の付加価値を求めるならそれなりのコストはかかる」と単純だ。お金持ちばかりが私学に行くと思い込んでいるみたいだ。
・ そのくせ、大阪府は知事の意向を受けて小学校3年生から中学3年まで習熟度別授業をやり、週2回の放課後講習、高校も土曜日の講習予算をつけるという。まるで私学だ。加えて「高校のトップ校の学区撤廃」を図り、「公立進学校化を促進」するという。
・ 私が恐れるのは「公立回帰」が加速するのではないかという危惧だ。助成の削減も痛いがそれ以上に「私学離れ」を恐れる。私学は生き残るためにますます「差別化、付加価値の向上」を図らないと、このように「公立が私立みたいなことをし始めたら存在価値は薄れる」。公立で良いということになる。
・ その辺のところを本校の教員は分からないといけない。私は公立のトップ校から私学に来て1年半になるが、今の感覚は「私学は大阪府民の声援」を受けているとは言いがたい。「物言わぬ一般の応援」がないのだ。私学に子どもを行かせている保護者は分かっているのだが、どうも「私学への好ましい感じは一般の府民はどうも希薄」なような気がする。
・ 確かに、一部の私学の経営者が乱脈経営で教育委員会幹部と癒着をしたり、最近では裏帳簿で無茶苦茶なことをしたりで評判は良くない。しかし圧倒的に多い私学は「しっかりとミッションを果たしている」のにだ。「何故だろう?」と思う。一部には「ええカッコして、公立に行けば良いのに、私学に行かせたりして」などのやっかみもあるだろう。
・ 「 7月府議会を経て今の暫定予算を本格予算化」しなければならない。もう私学助成削減は決まったも当然だと思う。我々はこれを「前提に20年度の経営見通しと対策」を考えねばならない。もう大阪改革については何回も何回も書いてきたので本校の教職員は分かっていると思うが「世の中も本校も完全に変わった」ということを強く認識しなければならない。