2008年8月26日火曜日

8月26日(火)モンスターペアレントその2

・ モンスターペアレントは間違いなく「教師を追い詰めていく」。前述の阪大、小野田教授のデータによればアンケート調査で「無理難題は増えている」と9割の教員が答えているとのことである。
・ 結果としてこれらの保護者の要求が「深刻な教育障害」になっていると8割近い校長などの管理職が回答しているとのデータもあるが本当かな。高校ではそのような高い感覚ではない。浪速中学もほとんどと言ってそのような気配はない。
・ 対応に追われた教員が体を壊したり、うつ病などの精神を病んでしまったりする例は「新聞各紙の教育ものの定番記事」だ。「心を病む教師の急増」などの見出しで。少しまえになるが東京で採用間もない若い女性教諭が保護者から携帯電話と「連絡帳」で激しく攻撃的なクレームに見舞われ自殺した事件は記憶に新しい。
・ 教員の数が12000人を超える大阪市の場合、06年度の市立小中校と特別支援学校の病気休職者は述べ226人でこのうち「73%が精神性疾患」を占める。この割合は全国教員の2.6倍で市の一般職員と比較しても1.8倍で異様な高さが浮かび上がる。表現は悪いが大阪は「モンスターペアレント跋扈」の様相なのである。
・ 大阪市小学校中学校の計428校には保護者からの苦情や相談が年間17万件あるといい、無理難題は3ヶ月の実態調査で計252件あったという。実に日に2ないし3件の対応に追われているとのデータであるが実態はもっと多いのではないか。
・ 仕事柄中学校の校長先生とお話しする機会が多いのだが「仕事は保護者対応ですよ。今日も又一人来て今教頭が対応しています」というお話しばかりである。管理職の仕事は「保護者対応」ですと明確に言っておられたのが印象的であった。
・ そして事態を複雑にするのは、保護者はすぐ「教育委員会に直接言う」ことである。市教委や府教委の担当者はクレームの電話番でこれなどまさしくテレビショッピングのクレーム係みたいな感じだ。学校への不満の捌け口が今や教育委員会となっている。もはや「校長の権威など実態としてはない」のだ。生徒までが「教育委員会」を口にする。
・ このような事態を重く見た市教委は小中支援プロジェクトの柱の一つとして「保護者への対応マニュアル」を作り、本年4月に全教員に配布したとある。言ってみれば「クレーマーへの対応手引書」であるがここの記載している12の例などホンの一部で「役に立つのかな」というのが私の正直な感想だ。
・ とにかく「お聞きするという姿勢、迅速に対応してレスポンスをする」ということが要諦だ。マニュアルなどの話しではない。高校生でもバイト先では理不尽な客の言い分に黙って「申し訳ありません、すぐ改めます。」と言っている。とにかく事態を複雑にしているのは間違いなく「初動の対応ミス」である。
・ 警察捜査と同じで「現場百回」で「事実を確認」そしてとにかく「早く、早く調査した事実とこちらの動きをお知らせする」のだ。「分かりました。直ぐ調べます。今こういう状況です。動いていますからご安心ください」くらいのフェーズで大体ことは収まる。
・ 公立の教育行政サイドは次の手として「弁護士を立てる」ところも現れてきたがこのような「対応」が物事の解決になるとは私は思わない。学校が真の意味で「保護者の目線、視点、気持ちに立っているか」であり、「かび臭い誇」などかなぐり捨てて対応することが近道だ。
・ 最後に強調しておきたい。肝心なことは「生徒の気持ち」だ。生徒と親の気持ちは必ずしも一致しない。そして「生徒は親と先生のトラブルを見たくないもの」だ。子どもが親に「一言、あの先生良いよ」と言えば90%は解決だ。
・ ところが時に子どもは「教育ママゴン」の追求を逃れるために「方便」を放つ。教室がうるさいから勉強できない、あの先生の教え方が悪いから勉強が分からないとかなんとか言って「自己を正当化する」ものだ。保護者はこれを鵜呑みにして、これが「担任や教科担当を替えてくれ」となる。
・ 高校で一度これに類似した例があり、匿名だったから困り果てたが学年全体の保護者に手紙をプリントで出したり、校長、教頭が「授業参観」に行ったりすると「ああ、学校は動いてくれている」と安心するのか、クレームがピタッと止んだりする。「間髪入れずに動く」が木村流の鉄則だ。
・ 前の学校での4年間の勤務時代には1度だけクレームらしきものはあった。それは「どこどこの先生の教え方が悪いというのではなくて、素晴らしい教え方をする数学のH先生やT先生に習っている子どもは幸せでそれ以外の生徒は損をする」という類のものであったが問題とはならず「保護者の愚痴」を聞いただけとなったものだ。
・ 本校に勤めて1年半、クレームらしきクレームはない。本当に助かっている。大阪市の前述した実態は「どこの世界の話?」と言う感じだ。おそらく私学において「保護者からのクレームが多い学校」とレッテルなど貼られたりすれば「一巻の終わり」だろう。
・ 教職員に私は徹底して言っている。「戦争する相手を間違えるな」「我々の給料の原資を払ってくれている支援者」「保護者こそ最大の広報メン」「保護者と言い争って何が得する」「面倒見の良い浪速」「仕事の速い浪速」等々だ。
・ 今のところ本当に教職員は見事に対応してくれている。だからクレームはない。なりそうになっても「直ぐ消火器で火を消すように」ジュッと収まるのだ。これは見事だ。特にベテラン教師、実績として男性教師の対応は上手い。
・ 若い経験の少ない教師は人生の後輩であり、年上の保護者に「幾分気後れ」するのかも知れないが、要は「保護者の気持ち」が今ひとつ理解出来ないのだ。「子を持って分かる親のありがたみ」の逆版だろう。
・ 誤解を恐れずに言えば若い女性教師が時に保護者とトラブる例が多いのではないか。クレーマーは圧倒的に母親が多い。父親が出てきたりしてもそれは「お父さん、学校に言ってください」と母親から頼まれたからだ。すべてではないが基本的に父親は仕事で頭が一杯で「日本の教育は母親任せ」であるのが実体に近い。
・ したがって母親という女性性と若い女性教師の女性性の間には男性をして理解できない心のひだみたいなものが作用していると考えればどうなるのか。誰かが研究してくれれば良いのだがと思ったりもする。女性教師の保護者対応能力が低いと言っているのではない。母親と女性教師のジェンダーとしての深層心理心象学の学問的研究のことを言っている。