2008年11月10日月曜日

11月10日(月)学校も訴訟対象の時代

・ 「学校が対策を怠った」「高1自殺」「部活動仲間はずれ」「両親大阪府を提訴へ」、最近の新聞記事の見出しである。大阪府茨木市で昨年10月マンションから飛び降り自殺をした府立高校1年の男子生徒の自殺を巡ってその両親が2400万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に求めるとある。
・ 「部活動の仲間はずれが自殺の原因であり、学校は適切な対応を取らなかった」というもので「スー」された大阪府も受けて立つしかない。両親によると生徒は水泳部に所属、好意を寄せていた女子マネージャーに交際を断られた腹いせにこのマネージャーの悪口を友人にメールで送信した。「良く聞くストーリー」だ。
・ ところがこのメールを受けた友人がこのメールを他の部員に転送した。「良く聞く話」だ。このことで部内での人間関係が悪化したという。悩んだ生徒は8月末に「ごめん、オレもういいわ。空に行くから」と言って「自殺をほのめかす」メールを送ったがこれも他の部員に転送された。
・ ますます距離を置かれた結果になってしまい、生徒は9月に両親に「水泳部で浮いている」と相談した。母親が担任に「部活での様子に気を配って欲しい」と要請したとある。これを受けて教諭は3回にわたり、本人から聞き取りを行い、自殺をほのめかすメールの存在も把握した。
・ 他の部員にも謝るように勧め、生徒も従ったが関係は改善せず男子生徒は10月9日朝に自殺した。「両親は事実関係を独自に調査」し、自殺を示唆するメールの件も葬儀後に初めて知ったという。
・ 父親は「自殺の1ヶ月以上前に教諭に相談し、対応を約束してくれたのに必要な調査を怠った」と主張していると言う。さらに「聞き取り内容を親に伝えず」精神的に追い込まれている子への治療を受けさせる機会を奪った。自殺を考えるほど悩んでいると分かれば学校には行かせなかったと訴えているのだ。
・ 一方学校側はメールの件は生徒本人が申し訳ないと思っており、「両親には伝えなかった」。その段階で自殺するような切羽詰まったようすは無かったと説明したという。水泳部の顧問とも連携し誠実に対応してきた「積り」だ。自殺という結果については非常に残念だと話しているらしい。
・ 真実はどうなのか私には分からないしそれは今後の司法判断が下されることであるが要は「学校は今や訴訟の対象」に簡単になるということである。昔は学校と言うのは絶対的な正で教師は「先生の言うことは間違ってない」と一目も二目も置かれる尊敬の対象であった。
・ やんちゃな私がいくら自己を正当化しても私の母などは「学校の先生に間違いはない」という思い込みは凄かった。先生や学校を訴えるなど考えも及ばないことであったろう。ところが今や教師と言えども簡単に訴訟の対象となって久しい。
・ 私はこの点を極めて心配しており日常教職員には「まずスピーディに対応すること」そして必ず「顛末を保護者に報告すること」の2点を口が酸っぱくなるほど言っている。大体この二つであらかた問題は解決するものだ。
・ 同時に私はこの間の保護者との話し言葉と態度に「誠意」を含めるように言っている。この誠意が「面倒を見るということの裏返」しだと思っているから、とにかく相手に伝わるように話をしなければならないと言っている。そしてそれでもこじれた場合は早い段階で直接私が「お話を聞く」と言うことにしている。
・ 「校長が直接保護者のお声を聞くという行為は大きな効果」があるものでこれをためらってはならない。売り込みもトップセールスが大いに効果あるのであって「謝罪もまずトップから」という「感度が重要」である。
・ 加えて私はすぐ事務長に指示して「顧問弁護士」に相談し、万が一の場合に備えて「論理構成と判例」を勉強しているのである。本校は弁護士を2名契約しており「セカンドオピニオン」を得ることが出来る。
・ 今後「個人の権利」「裁判員制度の改正」などで「訴訟」というものがより身近になることは避けられない。従って学校の訴訟件数は増えることはあっても減ることはないだろう。
・ 教職員も簡単に「訴えられる」ということを覚悟しておかねばならない。勿論訴訟大歓迎と言う態度ではダメであり、前述したように「スピーディに誠意を持って」対応し、とにかく「保護者に連絡」を怠ることなくこまめに報告しておくことが重要だ。
・ 今回の事例も保護者にメールの内容が伝わっていなかった。連絡していないのだからこの点は大きな争点になるだろう。とにかく保護者に連絡し「記録して置く」ように私は教員に言っているのである。この記録が後で役にたつ。
・ 「生徒には言いました」は通用しない。それに生徒というものは「学校で起きたことを親には話さないものだ」。そのように考えておけば間違いない。高校生と言っても「子ども」であり、未成年である。子供化に拍車がかかっているように思えてならないからだ。
・ そのことは間違いなく保護者そのものが変わってきていると言うことではないか。モンスターペアレンツと別の意味で「訴訟保護者」は今後とも増えてくるだろう。橋下知事は弁護士出身だから公立学校に「訴訟対応」を準備させた。さすが時代を読んでいるのだ。
・ 思い切って学校は「教科指導だけに限定」していく方法もある。部活動も運動会も芸術鑑賞会も修学旅行も遠足も一切無ければ訴訟の対象はなくなる。そういう言う時代が近づきつつあるのかも知れない。世界の学校で日本ほど教科指導以外の行事などがある国はない。
・ イベントがあるから事故は起きるのであってそれらは家庭でしてください。学校は一切関与しませんとなったら教員は本当に「楽になる」だろう。こちらの方が教育的見地からも良いのかもしれないという意見はある。