2008年11月20日木曜日

11月20日(木)今週は進路週間

・ 今週は「進路週間」である。色々な行事が計画されている。18日には「中学校の授業参観と学年集会」が行われた。特に「中学3年生は高校進学の話」が主体となり微妙で幾分重苦しい雰囲気であったらしいが副校長からは「うまく行きました」としか報告がないのでが無事終わったのだろう。
・ 高校は「保護者懇談」が始まっている。短縮授業だから6限終了後三々五々と保護者が学校に見えられる。「三者懇談会」となる。生徒が門近くでお母さんを待ったり、駅まで迎えに行ったり携帯で連絡を取りあったりしている。
・ 生徒は勿論、保護者のお顔は喜んだお顔ばかりではない。気が重くなっているのが良く分かる。それはそうだろう。中間試験の結果を明らかにして課題を話し合うのだから好まれる行事ではない。男子生徒に比べ女生徒はそうでもなさそうに見える。
・ お帰り時にはもっとお顔が暗くなられる保護者もいり。担任から「余り良いことを聞かされなかった」ことがすぐ分かるのだ。昨日も正門から駅までPTA役員の保護者と一緒になった。「話し、良かったですか」と聞くと「良いこと一つもありません」と苦笑いの状態であった。
・ 「校長先生、本人にその気にさせるのはどうしたら良いんでしょう」と聞かれるから、「特効薬などありません。学校も言いますが自宅の方でも諦めずに・・」と話が続いた。「お母さんの言うことを良く聞きますか」「「まったく聞きません」「お宅だけではありません」からと慰めにもならないようなことを話して駅まで着いた。とにかく「今日的生徒と母親との関係」が目に見えるように分かってくる。

・ 今年から進路指導部は「特別企画」をしてくれた。しかし何時も私は進路指導部長に言うのである。「今までの進路週間とは一体何をしていたの」「三者懇だけです」「そんなものだけでは普通、進路週間とは言わないだろう」「エー、マー」とこうなるのだ。
・ 新しい企画の一つは「先輩、お帰りなさい」というプログラムだ。テレビでやっているものは「年食った有名人を呼ぶ企画」であるが、進路が考えたのは「若い年代の年令の近い先輩を呼ぶ」ようにしたことだ。これは立派で褒めてあげた。「ウン、良く考えた」と。
・ 年取った有名人を呼んで話して貰っても、余りにも世代がかけ離れており、話す内容も幾分古びているのが正直な感想だ。「有名な先輩がいる」というのは「学校の求心力」にはつながるが目下の悩み解消には繋がりにくい面もある。
・ 今回は二人の若い先輩だ。一人は浪速中学、浪速高校、府立大を経て現在「みずほ銀行」勤務の銀行マンだ。20台で独身、見るからにフレッシュそのもので生徒には新鮮な感覚、背広でネクタイをピシっと決めた先輩は「輝く存在」に見えただろう。
・ もう一人は「大学の先生」だ。1995年浪速を卒業し阪大に現役合格、そのまま阪大の博士課程まで進む。九州工業大学の助手として就職し、2006年京都大学工学研究科機会理工学の助教として迎えられ今日に至っている新進気鋭の学者さんをお呼びした。
・ この先輩の話が大変良い。レジメまで用意してくれており、タイトルは「大学での力学」というものであった。ご専門が「計算力学」だからこのようなタイトルを付けられたのか分からないがタイトルにも「知性」を感じるではないか。
・ 「努力して学ぶことは力学」と定義されている。「力学以修己」をいう大阪の「懐古堂学舎の門に掲げられていた対聯の言葉」を流用されてお話を始められた。勉学は自己鍛錬といい、鍛錬は何処でもできるが「良い環境は何処にあるか」と話が具体化していく。
・ 「上位の大学の何が良いの?」とズバッと切り込み、頑張って一流大学に入る、遊んで適当に単位を揃えて卒業する、一流(と言われている)企業に入る、終身雇用で良い生活を送るは「このような時代はほぼ終わっている」から具体的な話が始まった。この「ほぼがポイント」である。完全に終わったではないところがミソだ。
・ 更に続く。「長いトンネルを抜けると雪国だった」という川端康成の名文をもじって「長いトンネルを抜けると更に長いトンネルの入口が待っている。」と言う。良い大学に入ってもそのこと自体は評価されず(時々チヤホヤされるだけ)と喝破し、結局次の長いトンネルが待っている。「いい大学に入る意味を考えろ」と強調し、結局「学ぶことの喜び、興味を持てる分野の選択、地道でも置かれた環境で勉強すべきことを勉強する」ことの大切さを現役の生徒に訴えてくれた。
・ そして「良い大学に入るには・・」とノウハウを後輩たちに伝授してくれ、面白いのは次だ。「良い大学に行けそうにない人は・・・」と番外編があることだ。これが良い。これは著作権侵害になるから公開ブログには書けない。しかし「立派に育った卒業生」であった。
・ 「誇らしい」。最後の締めが「若さこそ力」と言ってくれた。良い講演であった。講演後生徒が8名ほど追加の話を聞きに行ったそうだ。

・ 進路週間もう一つの目玉は「芦屋大学」訪問である。「人それぞれ天職に生きる」が建学の精神で特に教育系では力のある幼稚園から大学まで擁する一大学園で芦屋市六個園にある。ここには前の学校時代にお世話になった先生がおられる身近に感じる。そういえばあの先生、お元気であろうか。
・ なんと大学はバス1台仕立ててくれて本校の正門から正門まで送り迎えしてくれ、「パワーランチ」と言って豪華な昼食付きの大名旅行に保護者生徒の混成部隊がお世話になる。それにしても「大学も大変」である。

・ 「進路週間」が少しづつ変わり始めた。私は不思議でならないのだ。中にはいい加減な教師もいるが概して力のある教員が揃っていてこのような新しい企画がまったく持ち込まれなかったことは「一体、何が原因であるのか」と。進路指導部長ももう20年選手で今の中学の管理職も前の進路指導部長だ。私にはこのような優秀な人が何で今まで何もしなかったのか理解できないのだ。ここに「学校の基本的な問題」がある。浪速だからまだ居られるが企業だったら今頃は網走支店だろう。二人とも。
・ 昨年から辞める教師は多く居るが新しい人間は常勤講師は別として「私一人」である。この私の号令でこれだけ変わる素地を有していながら、結局何も変えようとしなかったのか変わらなかったのか、それが仕組みの問題なのか人の問題なのか、教員の意思決定と当時の管理職の責任など様々であろうがとにかく私には不思議でならないのである。ここに至ると「腹が立つ」のだ。