2009年5月6日水曜日

5月6日(水)私立校7割が卒業式出席させず

・ 連休を終えて東京から新幹線で大阪に向かう。東京駅も新幹線内も「閑散」としていた。「高速道路代が格安」となり、家族の人数を考えれば自動車の方がよほど効率的であるが、報道の通り「渋滞」が大変だったらしい。しかし最初からこの事態は分かっていたことだろう。テレビはこの「高速道路の渋滞」と「新型インフルエンザ」の報道ばかりだったというのが私の今年のゴールデンウィークの印象だ。
・ 新幹線社内では大阪までの2時間半、「新聞を隅から隅まで読む」のが丁度よい。5紙すべてであるが私の読む順番は何時も決まっている。まず「朝日」そして「産経」だ。そして「毎日」と来て「読売」である。最後は「日経」である。
・ 理由は色々あり、まず「朝日と産経の両極端な視点・論点を比較」し考える。これが随分と参考になる。特に1面の取り扱い方などは時に笑ってしまうこともあるくらいだ。毎日新聞、口の悪い人は「ミニ朝日」というが社会面の記事、特に教育記事に時に光るものがあり私は重要視している。
・ そして読売だが最近正直言って「良く分からない面」がある。右なのか左なのかもう少しスタンスを明確にして欲しいものだ。ただやはり「重厚感」はあり、中立に一般的知識として頭に入れるには「体系的」で勉強になる。
・ 最後の日経は「おいしいものは最後にとっておく」という感じで、私はなめるように記事を追う。企業時代の癖だがこの新聞は本当に隅から隅まで読むのだ。ただ最近は株価欄にあまり時間を掛けなくなった。
・ 昔、株を少しやっていた時は本当にこの新聞がなければどうにもならなかった。それに楽しみの記事は「私の履歴書」という囲みである。その月の1日から月末まで「世に名を成した人」が人生を履歴書として振り返るのだがこれが面白い。
・ 本当に「立派な人格者」と思える人やまだまだ「生臭い」「幾分尊大気味な」「自慢たらたら」などの部分はあるが、それはそれで「一事を為した人物」だけに、人間ドラマを見るようで参考になるのだ。
・ 彼らに共通しているのはすべて「仕事人間」ということで山野に住み雲や霞を食いながら「出来もしない理想論」をだらだらしゃべっている類の人間とは根本的に異なるところで、私はそこが特に好きだ。やはり「男は仕事とその結果」だ。「何、女性だって仕事でしょ」と言われそうだが、反論はしまい。
・ 新聞の楽しみ方のもう一つは「テレビ報道があった事案」について新聞各紙がどのように記事にしているかという点である。テレビやネット報道は当然早く、新聞は早くても翌日となる。従って「取り扱いの仕方で各新聞の姿勢」などが伺い知れてここが面白い。
・ 例えば1昨日NHKはゴールデンタイムのニュースで「私立高校の学費未納と卒業」についてかなり詳細に報道していた。テレビ報道の特徴は「いち早いニュースの提供ではトップを飾る」が短い時間では数値など視聴者の頭には残らないところである。
・ しかし「ニュースはとにかく早く」との原則から言えばそれはそれで良いのだが、これでは視聴者対し「判断材料」を与えるには「危険」が伴うと私は思っている。NHKのアナウンサーが「学費未納は卒業式に出席させず・・・・」などと報道したら「私学悪玉論」につながりかねない。NHKは中立に報道しているのだが聞いている視聴者がどの部分に反応するかまでは責任を持ってはいないのである。
・ そういう場合新聞は大いに助かる。だから「読む文化」は重要である。「聞く文化、見る文化」はもう十分日本中行き渡った。テレビを通じて日本中同じようなニュースやバラエティ、料理番組、ドラマなど地域差は全くなくなった。
・ だからもうもはや日本には「田舎はなくなった」と私は思っている。「目学問耳学問」は出来ているのだ。しかし肝心な「頭に残る」のは「読んでから入るのと耳から入るのでは大きな違い」があると思っている。
・ 若い世代は「見る文化」へと移行しているのである。これはやはり国としてまずいと思う。もっと我々は「読むという」原点に立ち返る必要があると私は危機感を有している。「携帯電話のメールを読んでいるではないか」という言う向きには「あれは読むのではなくて見るに近い感覚」と言い返しておきたい。
・ NHKのニュースについてであるが「産経」のみが今日の日刊で記事にしていた。見出しは「学費未納は留年・中退扱い」「私立校7割卒業させず」と出ていた。ニュースソースは「全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)」である。
・ これは「全教」系の組合連合で確かではないが全国30前後の支部があり、組合員は2万人とも言われるが確かではない。本校の教員もこの組織に属しているはずだ。特に活動の目玉は「公私間格差の解消と私学助成の拡充」としており、この点では経営者にとっては全く問題ではない。
・ 組合に加盟する28都道府県の私立高校315校から今年3月末時点での状況についてアンケート調査結果を発表したものらしいが回答した229校のうち、「卒業証明書を発行しない卒業保留」とした高校が146校で留年や除籍とする高校は12校。
・ 「卒業式にも出席させないとう措置」をとっている高校は81校にも「のぼった」との記事の表現である。一方そのまま卒業させてその後学費を納めさせると言う高校は42校と全体の2割にも満たなかったが記事の表現である。
・ 平成20年度に「経済的理由で退学した生徒は134校で513人、1校当たり1.63人」にのぼり、不況の影響の大きさが分かると書いているが、19年度は1.74人で些かでも減少しているのに書き方としては「19年度につぐ多さ」と書いている。微妙なものだ。
・ 記事には昨年夏以降中退者が増えており、「保護者の失業や両親の離婚などによる収入源」といった理由が目立っているらしい。私教連のコメントは「これから更に厳しい状況が予想」と記事にはあるが果たしてどうなのであろうか。大阪府で言えば今年の私学進学者は数値的には落ちていない。私学人気は依然として高いと私は思っている。
・ 以上の記事内容は本校でも大体同じ傾向というか現象面では似通っており、言うことはないが、この種の記事への反応としては敢えて言えば「ハーッ、それが何か?」といったところだろう。
・ ちなみに本校では授業料の滞納者は居なく全員が卒業式に出席して全てが証書を受け取った。内規によれば卒業式当日までに授業料の滞納があれば「式への出席は認めるが卒業証書は預かり」とするである。「発行しないのではなくて発行するが預かり」とするのが本校のやりかたである。
・ 新聞記事によれば「そのまま卒業させその後学費を納めさせると言う学校は全体の2割未満」とあったが、正直言ってそういうケースでは「回収は出来ない」ということは本校の過去のデータが示している。
・ 大阪府は私学助成を高校で10%、中学で25%と一挙に「無茶苦茶」なやり方で削減され本校でも数千万円、中学生との多い学校では1億円近い削減がなされたという。そういう中で「教職員への処遇、良い教育の展開、教育環境の整備等」を考えれば私学は「授業料が命綱」であり、簡単に授業料未納で卒業して貰うわけにはいかないのである。
・ 苦しいのはどのご家庭でも同じであり、しっかりと「納付して頂いている生徒保護者との公平論」も出てくる。確かに突然の事態はあり得ることであり、これに対する対応は「奨学金申請」等、何らかの手はあり学校はその方法を何時もPRし、支援している。
・ しかし「ある日突然に授業料を滞納」するのはほとんどいないのが実態で、滞納者は1年生の段階から滞納状態が続くなどのケースは多い。今は「公立の編転入が比較的容易」になってきており、公立に転入する等の教育費低減の方策はあるにはあるのである。単に「私立校7割卒業させず」と書かれたら私学関係者、特に「大阪の私学は泣くに泣けない」のではないか。