2009年6月12日金曜日

6月12日(金)私立学校の破綻


・ 「関西大学との連携契約調印式」が無事終わった。多くの方々のご支援を得てここまで来ることができたが問題はこれからだ。経営が苦しくて連携をしたのではない。支援を頼むのではない。「WIN-WINの関係」である。
・ 「生徒の為、教職員の為、学校の為に良かれ」と思って進めたことだ。「新しい関係の構築」に向かっていきたい。「力強いパートナー」を得たのだ。関西大学さんにご迷惑をかけるようなことがあってはならない。
・ それは「学校破綻」とならないようにすることだ。「私立高校の破綻」には色々なスタイルがある。公教育を担う私立学校だから「ある日突然に消えてなくなる」ということはない。会社は倒産と同時に「閉鎖」され門に鍵が掛かって中に入れないようになることは「普通の光景」だが学校はそうは行かない。
・ そういうことをすれば「生徒が路頭に迷い」大変なことになるからだ。そのような経営者は「処刑もの」である。監督官庁も世の指弾を受けることになるから、絶対にそういうことにはさせない。従って「破綻をカモフラージュ」させて「再生」の手続きを取ることになる。
・ 私学は結構「政治力」を有している学校もあり、具体的に国会議員などが理事として入っているケースもある。その狙いは監督官庁への「抑え」的なものだろう。創業者理事長はそういう発想をする。それに「耳目を引く」ため、「有名人を理事」に持ってきたりするのだ。しかしそういうことは「全く意味をなさない」。
・ まず多いのが「経営難に陥った学校」が「他の学校法人に吸収合併」されるのが一般的である。これだと見えないところで「物事が進む」から生徒保護者には全く分からないからだ。生徒保護者にとって見えるのは校長以下学校の先生だけなのである。
・ 私の部屋の入口は「理事長・校長室」と表札があるのだが、ある時生徒から「先生、理事長って何する人?」「理事長と校長とどちらが偉いの?」と聞かれたことがある。生徒の感覚はこのようなものである。「学校経営」などの概念は彼らの頭の中にない
・ 吸収合併のやり方にも色々あって「合意の上」と「理事会多数派工作での乗っ取り」がある。穏便な方法は「合意」の方法だ。ほとんどのケースに当てはまる。このケースで多いのは私立高校が「大学グループ入り」することである。
・ 特に一昨年から昨年にかけて大阪府では多かった。北陽さんが関大入り、初芝さんが立命館入り、啓光学園さんが大阪工大入り、飛翔館さんが近畿大学入り、摂陵さんが早稲田入りと枚挙に暇がないくらい多かった。
・ 大学側も「系列校」なり「係属校」なり、「傘下の高校」が増えることは「学生募集に有利」と見て受け入れてきたのだろうが、今年の募集状況では必ずしも狙い通りとは行かず、早稲田摂陵さんのように「厳しい」ところも出てきている。
・ 本校は関西大学さんと「連携校」という「新しい概念」を構築した。付属校や係属校とは全く違う概念だ。「関大にとっても初の連携校」である。とりあえず「中学校から始めましょう」とスタートした。高等学校は今後の成り行きと双方が確認している。
・ もう一つのケースは「理事会多数派工作」みたいな方法で支援を頼んだ他の学校法人が「現在の理事長を追い出す方法」だ。そして「法人名称」を変えるやり方である。これは一見「乗っ取り」に近いが法的には問題ない。企業では普通の光景だ。
・ 最近大阪で一つの事件があった。噂であるが某私立高校において以下のようなことがあったと聞く。真偽の程は分からない。創立以来女子校であったが生徒募集に苦しみ、他の学校法人に支援を頼み、何人か知らないがその法人から理事に入れたが、その理事たちが共同して創業者理事長とその息子理事を「追い出した」という。ウソかまことか分からないが絵に書いたような「乗っ取り劇」だ。
・ だから理事会や取締役会は「恐ろしい」。「多数決で全てが決まる」。しかし元来理事会とか取締役会とはこういうものである。経営に反する背任的行為、経営に対する無能力を排除し、経営結果責任とかを明確にするために「理事の多数決」で決まるようになっているもので、そういう意味では正しいのである。
・ 創業者やその息子の理事がアホウで背任したり無茶苦茶だったりすると大きな損害を会社や公益法人に与えることになる。漢字能力検定協会の理事長とその息子の事件はすさまじかった。噂ではその学校の理事も「有名なワイン通」だったと言う。大体学校経営者がワイン通でどうするのか。
・ もう一つの方法は「民事再生」で出直す方法がある。これは法的にオープンにして一旦「倒産」させ「再生」させるものである。民事再生は「再建型の倒産手続き」であるが社会的信用の失墜や地域に与える影響が大きいだけに申請した事案は少ない。
・ 「 2001年から2007年までの間に倒産した学校法人は22法人」あるが破産整理が10法人で民事再生は12法人、しかし内高等教育機関を設置する学校法人はこれまで3例と「帝国データバンク」はレポートしている。
・ 今私はある私立学院の破綻処理に注目している。香川県三豊市の学校法人瀬戸内学院だ。短大と専修学校と高等学校を有する立派な歴史と実績を有する「地方の私立学園」であるが2009年3月に東京地裁に民事再生手続きを行った。負債総額は23億円と言う。
・ 破綻の原因については詳述しないがここでも「法令違反」で文部科学省の補助金が全額不交府となり前年の2007年度も没収され「資金繰りが急速に悪化」して破綻に至ったものである。生徒は集まっていた学校であったから完全に経営者の責任である。
・ 再生については隣の善通寺市のG学院が支援に乗り出し2名の理事を出し、その後三豊市の関係者などが理事に就任して「理事長以下全理事は当然退任」である。面白いのは「三豊市が補助金をだす」ということまでしている。全く監督権限のない市が交付金を出すなど全国初めてのケースではないか。
・ これは瀬戸内学園が三豊市にとって「なくてはならない学校」だと評価されていたからに他ならない。力強いスポンサーがあったからこの学校は再生できた。しかし普通はそうは行かない。本校が危機になっても大阪市は1円も出してはくれないだろう。
・ 企業にとっても将来の分からない私立学校に「運転資金」など簡単意は出せないからだ。2002年100年を超える伝統校である「東京本郷にある郁文館学園」を居酒屋チェーンのワタミが支援に乗り出し再生させたのは知る人ぞ知る。
・ 又本校の近くの初芝学園が「うどん店チェーンの杵屋」の経営者に理事長以下経営を手放した事案も記憶に新しいがこの学校はその後立命館グループ入りした。このように短い間に経営陣は結構替わっているのである。
・ 本校の理事会構成は私が居て、一般者理事が1名、大学関係者が1名、後の4人は神社界の人たちであるが幸い、民事再生手続きもせずに今日まで来たし、「経営主体は大阪神社庁で85年間」やって来た。
・ この間神社界の手から離れたことはない。私は何時も言っているのだ。7名の理事のうち多数決の4名は絶対手放してはいけないと。しかし多数決をとると言うことは「経営責任を果たす」ということである。 学校経営は「片手間」でできる仕事ではない。「学校法令」を身に付け、「ややこしい教員」と互角に渡り合っていかねばならない。何より「胆識」が重要である。私は「私の後」を心配しているのである。浪速を破綻させてはならない。