2009年8月22日土曜日

8月22日(土)年次有給休暇制度


・ 有給休暇制度について再度教員に「教示」する必要がある。案外知っている人は少ない。「休暇を取ることだけは知っている」がその「法的背景」も知っておく必要がある。正式には「年次有給休暇制度」という。略して「有休」と言うのが一般的か。
・ 年次有給休暇の発生要件は「労働基準法39条1項」に規定されており「労働者に対して次年度に法定の年次有給休暇を与えねばならない」との表現で「二つの要件」を示している。いささか複雑で分かりにくい。
・ 簡単に言えば一つは6ヶ月以上の「継続勤務」と「全労働日の8割以上出勤」した人が対象としており、「付与日数」も色々条件があるが普通は20日までとされている。継続期間によって計算方式があるが「法定最大の20日間」に前年残分を付与するが最大計40日というのが一般的である。
・ 本校では4月採用の新人先生にも30年のベテラン先生にも一律20日を付与し継続年数は影響させていない。大体1昨年も昨年も年次20日間に対して14日程度の「平均取得率」だからまだ余裕はある。理由は「年間変形労働制」を導入したり、「夏季や冬季に特別休暇」を入れているのでその影響も少しあるかもしれない。
・ 有給休暇の「付与単位」は労働基準法では「最低分割単位を1労働日」としているので使用者は労働者に対して「半日単位」とする義務はないのだが有給休暇制度の趣旨から考えて使用者は「半日単位」での付与は可能で、大体どの企業もそのようにしている。
・ 本校も長い間、「半日単位付与」であったが私は着任後それを「時間単位」に改めた。その理由はとにかく「振り替え授業が多くて」生徒に大きな迷惑を与えていたからである。半日ということは「3こまの授業の振り替え」であり、極めて大きい。
・ 従って「時間休」にすれば朝の2こまは振り返るが後の1こまや2こまは正規の授業が可能と考えたからである。特に本校の教員は「振り替え授業」を正当化するきらいがあるが「とんでもない話」だ。まず公立高校ではない。
・ 「授業と授業の間にはリズムやピッチ」があり間隔が空いたり、連続して同じ授業があったりでは予習や復習にも大きな影響を与える。「学習効果に影響」があるから簡単に振り替えということはすべきではない。また依頼した他の教員の「教材準備」の都合もあるだろう。時間割カリキュラムを簡単に変えてはならない。これは私の信念である。
・ 今日もある常勤講師の先生を呼んで「余りにも時間休が多いが、お体の具合でも悪いのですか?」と私は聞いたのである。どうも「授業が終われば帰っても良い」くらいの認識しかお持ちでなかったみたいだ。
・ 「授業のあと、分掌の仕事とかあるのではないですか?」と聞くと試験の時の時間割作成が仕事で今はありませんと答えられたのである。「専任教諭と常勤講師は始業開始から終了までの労働を前提にすべての処遇条件」が決められているのであって「時間休の無原則な取得」は問題である。授業だけなら非常勤講師に成れば良い。
・ 随分前にもとにかく生徒の授業が終われば「時間休」を取り、学校にいないのでその理由を聞くと「奥さんの買い物に付き合う」と言うことだったので、「あきれ果てた」ことがあった。これは徹底的に指導した。
・ このように書くと有休日の「自由利用の原則」に反すると指摘を受けそうだが確かに過去の判例でも「利用目的は労基法上の関知しないところで休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由」とされてきている。
・ しかし使用者が「事業の正常な運営を妨げるおそれのある場合」は時季変更権の行使の代わりに「休暇の理由を聞く」ことは差し支えないとされている。「理由は言えません」と言えば使用者は「時季変更権」を行使してその日を変えてもらうだけである。
・ 「時季変更権」とは労基法39条4項にあり、「労働者の請求する時季」に与えなければならないが、前述したように「事業の正常な運営を妨げる場合においては他の時季にこれを与えることが出来る」という極めて使用者にとって重要な条項である。
・ 企業時代の管理職時代を含めて長い間管理者として「部下の労務管理」をやってきたが昨日初めて私は「時季変更権」を行使した。ある教員がこの8月31日の「始業式から連続3日間有休取得の申請」が前にあったらしく一旦は管理職である教頭は承認をしたのである。
・ しかし私はこの事実を知り、今「新型インフルエンザ問題」で学校が「戦々恐々」としている中で「夏休み明けの大事な時」に「クラス担任」として始業式も含め3日連続で有休を取ることは正常な事業が損なわれる恐れ大と判断して時季変更権を行使したのである。
・ この教諭はとにかく連続で有休を取得し8月は3日から連続で4日間有休を取り、そのまま「リフレッシュ休暇」に入っている。連続16日間休んでいるのである。学校再開後の18日は「職務専念義務免除」を申請して「人間ドック」に入り、また重要な始業式も休むと言う。「教師として考えられない行為」である。
・ 確かに労働者はこの日に取りたいとの「時季指定権」を有してはいるが私は「時季変更権」を有しているのである。教職員は有休取得制度の趣旨を良く理解し適切に申請することが求められる。
・ 公立学校は「条例」の縛りがあり徹底した勤務管理がなされている。しかし私立学校は「労働基準法と関連法」の規定で余りにも定義が広いが「職業が教職」という成長過程の子どもの教育に当たっているということを忘れてはならない。
・ 労働者であると同時に労働法の規定を超えた「教育者としての存在」があるわけで勝って気ままに「時間休は取るわ、有休は取るわ」では肝心の事業の正常な継続に影響があることは明らかである。
・ 学校における事業の正常な継続とは「教育活動そのもの」であり「社会に信頼を得る学校つくり」であって「本校の教育の目的を達成する」ことである。そして使用者の立場から言えば「教職員全体のバランスを取る」と言うことも大切な業務である。
・ 前述の教員はもう残余有休日数は少ない状態であるが、別のある教員はまったく有休など取らずこれはこれで問題なのだが、頑張ってくれているのだ。昨年から始めた「残余有休日数の買取」はこのような先生への私の配慮であった。望ましいことではないが「結果論」として有休を取ることができなかった人々への「私の気持ち」なのである。
・ 組織はそこで働く労働者の「勤務の有様が乱れてくれば」その「組織は腐敗」する。「やみ専従」「ながら労働」「幽霊労働」「早引け早退」「遅れ出勤」「有休の虚偽申請」「特別休の虚偽申請」「職務専念義務違反」などすべてである。まず基本は「職務に専念する義務がある」のである。
・ 今私は本気で来年度から「時間休制度の見直し」を考えている。生徒へ良かれと思って導入したが、結局教職員の利便さだけで「学校からの早退」に上手く使われているだけなのではないかと思っているのである。校長という仕事は本当に「気骨の疲れる」仕事だ。教員はもっと「社会的一般常識を持たねばならない」。