2009年10月29日木曜日

10月29日(木)高校授業料無償化







・ 全国の「高校の授業料が無償化」なのに大阪だけ(保護者から)取るのは「恥ずかしい」と知事は言われたとある。こういう「けれんみ」のないというか「素直」なところが府民の支持を得ている証左だろう。私は知事のこういう発想をするところは好む。人間は「恥ずかしいかどうか」が重要な「判断基準」である。
・ 大阪府は「全国一公立高校の授業料が高く」て全国平均118800円に対して144000円と25200円もの開きがある。従って府が何もしなれば保護者には25200円請求しなければならない。これでは無償ではなくて有償となる。
・ 大阪だけが有償となれば、「全国の笑い者」になるだろうから橋下知事は他に財源を捻出して全国並みに無償としたのである。財源は23億円と言うから交響楽団やワッハ上方資料館への支援額どころへの補助金額ではない。まあしかし財源など世帯の大きい大阪府だからどうにでもなる話なのだろう。
・ 鳩山政権が進める目玉マニフェストの「公立高校授業料無償化」はほぼ案が固まった。当初言われていた家庭の年収規模での格差もつけず一律支給となった。年収2000万円の家も生活保護世帯も全く同額である。そういう「思想」だからそれはそれで仕方が無い。助成ではなくて無償だから全く別の「概念」である。
・ 嬉しいのは文部科学省の施策だ。「私立高校生にも公立と同額の補助」をしてくれる。低所得者には倍額の25万円と言うから小さな金額ではない。又最近ではそれでも低所得者には負担が残るから公立と同じく「完全無償化の検討」が進んでいるという。
・ 基準は年収規模が350万円以下であれば無償化できるように文科省から総務省に「地方財政措置要望」に盛り込むことを決めたと報じている。これは今までの公立の授業料減免などに負担してきた「地方交付税」が不要になってくるからでこれを流用しようという考えだ。間違いなく回して欲しい。
・ 私学の設立者としては「大いに保護者の負担軽減に繋がる」ものであり、歓迎したい。世界では高校授業料は殆どが無償であり、「流れ」である。ただ注意しなければならない視点もある。
・ 日本は現在「高校進学率が97%を超えており」無償化するからと言ってこれ以上進学率が上がるとは考えられない。ここはポイントである。すなわち政策効果は民主党のマニフェスト「生活が第一」を受けた「生活支援」であり、生活の質的レベルアップが目的なのである。こうなると一律支給はおかしいと言う議論にもなってくるが。
・ この施策で教育効果があるとは考えられない。正直言えば「奨学金拡充」などに向けられるべきで「本当に必要としているご家庭」に傾斜配分で向けられても良いのではないかという意見も強い。
・ 「高校中退の理由」ははっきり言って経済的理由と言うより「学校との適性」や「学ぶ意欲の問題」などが90%を越えているというデータや意見もある。ほぼ100%の生徒が携帯電話を持ち月々10000円の携帯電話代と同額の月々10000円の授業料とどのようの整合性を取るのか。
・ 学校が終われば遊興費のために「アルバイト」に精を出し、4万円や5万円を稼いでいる今日的高校生もいる中で、本当に困っている生徒への支援を拡充してやりたいという学校関係者の意見は結構多い。
・ 又「給食費や授業料未納問題」ではお金があっても払わない「保護者のモラール低下や意識の問題」もあり今後「授業料無償化」だから「教材費や修学旅行費」など払わないケースが出てこないか心配している学校関係者もいる。
・ 先般大阪府の教育長は府議会において高校授業料の未納が遂に4億円を超えたといって「対応策」を取ると言明しておられたが、無償化になる前に回収して欲しいものだ。府民の税金である。「税公平の原則」である。
・ 本校では授業料の滞納はあるにはあるが「昨年は年度末でゼロ円」だった。今年はどうかといえば少し出ているがこれはご家庭の経済状態の厳しさと我々は分析している。しかし今まで順調に来ている。素晴らしい保護者ばかりで私は嬉しい。少し実態を示しておこう。
・ 7月末で滞納額が370万円、8月末で220万円、9月末で110万円、10月中旬現在で31万円となった。この31万円も今後の納付日が全て分かっている話だ。私学だから保護者からの納付金がなければ学校はやっていけないと「教員と職員がチーム」を組んで対応してくれているからである。
・ 勿論「街金融の取立て屋」になってはいけないから、その点は厳しく指導しているがご理解を頂いているみたいである。本当に困っているご家庭には「相談に乗る」という姿勢があれば保護者はぎりぎり頑張ってくれる。
・ 私の意見は拡充しなければならないのは「高等教育の分野」ではないかと思う。大学支援の話が何処からもない。これは深刻な問題である。統計データがあり30歳で結婚、37歳で幼稚園児が二人の家庭での教育費は17%に対して、52歳で大学生二人の家庭では33%に教育費が跳ね上がるという。「大学生への奨学金の拡充こそ焦眉の急」ではないのか。
・ しかし「とにもかくにも」、国も大阪府も私立高校のことを考えてくれている。しかしこの高校授業料の無償化の財源は4600億円と言われる。そして文部科学省の来年度予算の概算要求は5兆7500億円と昨年より4700億円増大しこの大半が高校授業料無償化である。
・ 早速産経新聞だけが28日の朝刊1面トップで報じていたが財務省は「教職員給与」に関する国庫負担を現在の1/3から1/4へと引き下げる方向で検討しているとの記事であった。
・ この「国庫負担金」問題は平成17年当時の小泉政権が「三位一体改革」で1/2を1/3に引き下げたものでこのブログでも随分前に何回も記述してきたものであるが、現政権も財源の当てとしてここに「目に付けた」というわけだ。4100億円になるらしい。
・ 今度は同額の税源を地方へ移譲できないだろうから「地方の負担割合」が増えれば財政難の自治体は「教職員給与の総額を抑える」しか方法はないから「更に教職員の給与が下がる可能性」が出てきた。これは「地方の反乱」を招きかねない一大騒動になるかも知れない。
・ これが成されれば高校の授業料の無償化とは実は全国の「教職員の給与を下げてそれを財源」として回すということになるのである。これが行き過ぎれば全国各地各都道府県で同じ先生なのに「給与の高いところの先生と低いところの先生」が際立って発生するということになるのか?
・ 大阪府が新しく導入する公立私立高校授業料施策は公私比率7:3の崩壊とあいまって「新しい時代への突入」となってきた。別途詳細に論じなければならない。本校も来年4月に向かって新しい「制度設計」が必要になってきた。本校独自の「経済的困難家庭への特別支援策」を考えるべき時期がきたという感じである。