2009年11月27日金曜日

11月27日(金)改定労働基準法




・ 平成20年12月5日の第170回臨時国会において「労働基準法の一部を改定する法律」が可決成立した。「平成22年4月1日から施行」される。この改正は「時間外労働に対する割増賃金の増額」「割増金に代わる休暇の付与」「年次有給休暇の時間単位での付与」等重要な改正が加えられているものだ。
・ これを受けて本校では「就業規則」を変更しなければならないので本校の対応と今後の手順について昨日の職員会議で私は方針を説明した。民主党政権で「生活者重視」の路線が矢継ぎ早に出て来ているが、不思議なもので「世の中の傾向は全てが一点に揃う」ように思えてならない。
・ このことを「流れ」という言い方もある。「まあ、世の流れ、時の流れ」という言い方である。今私立高校に大きな流れが「勢い」を増している。どういうことかといえば長い間の私学の放置されていた領域が今「労働基準監督署」によって「えぐられ」ようとされているのである。
・ 「時の流れ」と私は思っているが、これは私学にとっては「一大事」なのである。分かり易く言えば労基署は「私立学校は公立学校ではないでしょう!」「地方自治体の条例の縛りを受ける公立学校の教員ではないでしょう!」と言い始めてきたということだ。
・ このことを言い換えれば「労働基準法を遵守してね!」と言うことなのである。ここ1年大阪の私立高校に何が起きているか一般社会の人は余り関心が無いし積極的に誰も発信していないから騒動になっていないが「大変なことが起きつつ」あるのである。
・ これについてここでとやかく書くつもりは無い。他校は他校、本校は本校だ。実は着任して3年になるが私は「この状況を想定」して「準備を進めて」きた。私は民間から教育界に転じた人間である。
・ 民間企業において最大かつ最重要な法律は「労働基準法」と言って良い。労基法に対する「遵守の精神」は身に染み付いている積りであり、「従業員の労働安全、衛生規則」など管理者として最も敏感に対応しなければならないものである。
・ 私はまず最初に「労働者の勤務管理」を適正化することに務めた。正直、昔の本校は「自由出退勤」の大学みたいな学校で全てではないだろうが授業のあるまでに学校に来て授業が終えれば学校にバイバイする。
・ 就業規則にないような隠れた自由選択の「半日休暇」が「闇」であるものだから実質的には公立と同じ週休二日であったのである。闇なものだから「振り替え授業」が多くて年間の「生徒自習時間」などここで書けないくらい多く発生していた。
・ 酷いのになると終業式の日から始業式の日まで生徒と同じように休む先生も居たりしていた。「生徒の休みが教員の休みと誤解している人」もいたのである。私は着任後教員に「君たちはパートタイマー労働者だ」と過激に言ったことがある。要は「勤務管理がデタラメ」の状態であったのである。
・ 又毎月17日が意味不明の学校休校日だったり、試験期間中にも訳の分からない教員の休暇があったりでとにかく私は「驚き桃の木山椒の木」で「全てをリセット」して再出発する体制を整えたのである。
・ 「就業規則を全面的に改変」し、まず「タイムカード」方式を導入した。その後全員に「個人パソコンを貸与」し勤務管理を「コンピューター管理」に移行した。試行錯誤を経て今や労働基準監督署から「お褒めの言葉」を頂くようになったのである。
・ そして教員の勤務日は「学校の教師と言う仕事の特殊性」を考えて「年間変形労働制」を導入した。忙しいときには頑張ってもらうが、夏休みなど生徒の居ない時には教員にも「長期のリフレッシュ休暇」と言うものを導入したりしている。
・ 今や大阪府の私立学校経営者協会(私経協)でも「研究会」や「研修会」のオンパレードで「対応策」を考慮中と言うが別に難しい話ではない。「労働者の権利と義務を明確」にするだけの話である。そして経営者が法にのっとって「やるべきことはしっかりとやる」と言うことである。
・ 改定労基法の趣旨はあくまで長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに、「ワークライフバランスを図る」ことを意図した改正であることの理解が重要である。従ってやむなく時間外労働が発生した場合は労働者への補償的意味合いから種々の法的支援がなされているのである。
・ 特に新法の骨子は「割増賃金率の引き上げ」である。1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合は60時間を超えた部分については通常の労働時間の賃金計算額の50%以上の割増賃金を支払わなければならないとされた。
・ 又「代替休暇の付与が明文化」された。新法では37条に3項が追加され、割増賃金の支払いに代えて休暇を付与しうることとされた。これは労働対価がお金だけではないということである。しっかりと「休養を与えなさい」という意味である。
・ 特に大きな改定は年次有給休暇の「時間単位年休」の取り扱いである。新法は39条に4項を追加して年休を「時間単位で付与」することを正式に認めた。教職員の疲労回復と言う観点からはある程度まとまった日数の年休を付与することが望ましいが、依然年休取得率が伸び悩んでいる一方で時間単位での年休取得への希望もあることから一定限度で半日よりも短い年休取得を認めようと言う趣旨である。
・ しかし「労基法上の精神」は使用者が半日単位での年休を付与できることは可能とした差裁判例などからの行政解釈であり、年休は休養や活力の養成を趣旨とするものだから「分割の最低単位は1労働日であると言う法の精神」はあくまで生きている。
・ そして今回の改正で労働者の範囲の規定、「時間単位で可能となる有給休暇の日数は最大5日」となった。又「最小単位は1時間」であり30分単位のように細切れにすることは出来ないこととなった。
・ 今私は改正労基法を受けて頭の中で「来年4月以降のあり方」を検討しているのである。今後大きなポイントは「部活動を勤務とみなすかどうか」であり、この問題は様々な議論がある。大体「新学習指導要領」にも取り扱いが明確ではない。教職員団体の姿勢もまだ良く見えていない。
・ 「裁量労働制」の導入も一つの考えである。こうなれば当然「定額の手当て」が必要になる。そうすれば現在支給している「調整手当て」との整合性の問題も出てこよう。いずれも簡単に整理される問題ではない。
・ しかし「アンタッチャブル」となっていた私立大学、私立学校の「教員の残業問題」が徐々に世の中に登場しつつあるのである。私は「先見の明」を誇りたい気持ちもあるが、実はまだまだ細部では問題を抱えているのだ。油断は出来ない。