2010年2月28日日曜日

2月28日(日)その1:終身雇用の幻想







・ 朝方、雨が残ったが9時前にはお日様が顔を覗かせた。少し風が冷たいがまあ良い日曜日となった。昨日の卒業式は結局雨は終日無く無事に終えた。何しろ暖かかったから体育館もそれほど寒くは無く助かったのである。例年なら冷え冷えとする卒業式であったのに、本当についている。今日はまだ「卒業式の余韻を楽しんでいる」のである。
・ 「ゆっくりとした休日」となった。ただチリの大地震で津波警報が日本列島を襲っておりテレビを付けっぱなしにして状況をおっていたのである。「明日からは北海道、東京、沖縄方面に2年生が修学旅行」に出かけるから大変気になるのである。東北方面の太平洋沿岸では津波が観測されているがどうも大きなものではなくて被害も大きなものにはならない感じで一安心である。

・ 卓越した経営者として一世を風靡した元GE社のCEO(チーフ・エグゼブティブ・オフィサー)のジャック・ウェルチ氏は「暇があれば従業員をクビにすることを考えている」と言うがこれは一つの話しだろう。
・ 日本ではすぐ「訴訟」などが起こりそうで簡単な話ではない。私は「暇があれば誰を専任教諭に採用するか考えている」と言ってよい。私はアメリカ人ではなくて典型的な「義理人情型の侍人間」だと自分では思っているから「切るより採る」だ。
・ 何時だったか忘れたが昨年の日経夕刊に「関西大学教授の竹内洋先生」のコラム記事があった。「旅の途中」という囲みなのだが中身は「日本的経営の神話」というものだ。しかし竹内先生の寄稿は何時も「頭の整理」に参考となる。
「派遣切り」とか「正社員のリストラ」「正教員の整理解雇」とか雇用問題が大きな社会問題と成っているが、その対比として「日本的経営」と言われる「終身雇用や年功序列体系」は昔からあったわけではないと先生は切り出されている。
・ 先生は一つの「データ」を持ち出されて論考を進められる。この辺がとても私は好きなのである。自分の意見ばかり言わないでデータを出してこれを読み解いたり比較したりすることで「論考に厚みを持たせるスタイル」で、どちらかと言えば「理系のスタイル」である。
・ 私は完全に「理系人間」である。他の学校に勤務している現役の先生から「とにかく私のブログは数値が多くデータがあるのが大変良い」とお褒めに預かったことがあるくらいだ。教員が理系か文系かはここでは本題からそれるから言うまい。「理科や数学の先生が理系人間」と考えて良いのか?
・ これについてもここでは論評しないでおこう。一般的に教員はデータに弱いというか避けるところがある。それはデータを出すと傷つく人がいるというのである。しかし「データは真実を語る」。
・ 話しを元に戻して「1937年の戦前のサラリーマンのアンケート調査結果」を竹内先生は持ち出して来られ、その中の質問項目に「サラリーマン最大の恐怖」というのがあると書いておられる。1位は「馘首」、すなわち首になるということであるが、2位は「病気」、3位は「仕事の失敗」と続く。
・ しかも1位の馘首は2位以下を大きく引き離しており、回答者の2人に1人は挙げているという。即ち当時もサラリーマンの大半は「何時解雇されるかも知れない」という大きな不安を抱えていたのであると先生は証明してみせる。
・ 同時に質問で「サラリーマンに必要な社会政策は?」との問いには「失業保険」が1位に来ていると言う。若しサラリーマンが「終身雇用」を信じていたらこのような回答にはならなかった筈だと先生はいわれる。
・ 実際戦前の企業においてはサラリーマンの「解雇は日常茶飯事」であり、又同時に景気がよくなればサラリーマンの方もこれまで勤め挙げてきた「会社に見切り」をつけて簡単に「転職」しているという。こういう「論旨の展開」は本当に面白いし勉強になる。何か日本の話ではなくてアメリカの話しみたいである。
・ 戦前のサラリーマンにとって「永年勤続によって昇給・昇進・昇格し定年まで企業に留まると言うのはかなりかなり稀」だったのである。「終身雇用や年功序列の日本的経営」がある程度定着したのは「戦後の高度経済成長時代になってから」に過ぎないと先生は言われる。
・ 以下からが又面白い。しかし高度経済成長を生きたサラリーマン(かく言う私もこの世代)にとっても終身雇用に当てはまる人はそれほど多いわけではない。「1991年度で見ても50歳代前半で同一企業に勤めている人は高卒で12%、大卒で22%」に過ぎないと。今はもっと低い数値だろう。
・ 大企業(1000人以上)で見ても高卒22%、大卒51%であるから戦後の高度成長期を生きてきたサラリーマンでも戦前の作り話と同じで「終身雇用など半分は神話の世界」と竹内先生は言われている。
・ 「昔は良かった」とか「昔に戻れ」とかいうがその昔とはついこの前の話であり、わざわざ「日本的経営」などと大上段に振りかざすものではないと先生は皮肉られているのである。
・ 考えてみれば私も55歳で前の会社から「退職金」を頂いた。定年まで5年を残して退職した。人事異動みたいなものであったが、民間人校長になるということは「大阪府の公務員になる」ということで「出向」とはならず、退職せざるを得なかったのであるが、とにかく定年を待たず早期退職をしたのである。
・ 私のように「大企業の大卒の半分は早期に退職」しているというデータも分かった。今問題と成っている「高級官僚の早期退職と渡り」についても考えてみれば「終身雇用」ではない。
・ そこで「一体教員の世界はどうなんだ」と話しを展開しないと面白くもなんとも無い。単なる「ああ、そうですか」に終わってしまう。そうなのである。「教職こそ唯一の終身雇用の世界」だったのである。少なくとも今までは?
・ 教員と言うのは基本的に昇進昇格というのはない。同期が偉くなったからと言って「身を引く」様なことは無い。悪いことさえしなければ「定年まで給料が上がり続ける世界」である。少なくとも今までは?               (その2に続く)